大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和38年(オ)445号 判決 1964年3月03日

上告人

橋詰すて子

被上告人

滋賀県教育委員会教育長

横山和夫

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由は別紙のとおりである。

論旨は、小学校の教員も地方公務員であるから、その進退は地方公務員法によつて律せられるべく、免許状の失効によつて教員たる身分を失うことはないというに帰する。

公立小学校の教員が地方公務員であることは、教育公務員特例法三条の規定によつて明らかであるが、地方教育行政の組織及び運営に関する法律三五条は、職員の任免等身分取扱に関する事項は、同法及び他の法律に特別の定がある場合を除き、地方公務員法の定めるところによる旨を規定している。そして教育職員免許法は、右にいう特別の定をしている法律と解すべく、その三条一項は、「教育職員は、この法律により授与する各相当の免許状を有する者でなければならない。」と規定しているのである。免許状を有することは教育職員の資格要件であり、この要件を欠くに至つた場合には教育職員を当然に失職するものと解するのが相当である。

原判決の確定するところによれば、上告人は昭和二六年九月一六日に免許状なくして中学校助教諭に任用され、ついで小学校助教諭に任用されたのであるが、その後関係法令の改正もあつて、昭和二八年四月一日、有効期間一年の臨時免許状を授与され、さらに、昭和二九年四月一日に同様の免許状を授与されたというのである。昭和二九年六月三日法律一五八号によつて改正された教育職員免許法九条二項により臨時免許状の有効期間は三年に延長されたのであるが、上告人の右の免許状が昭和三二年三月三一日をもつて失効したことは右の規定上からも明白である。原判決が右と同趣旨の法律解釈のもとに、上告人が右の日に教育職員を失職したと判示したのは正当であつて、なんらの違法もない。

論旨は、上告人は、免許状なくして助教諭に任用された事実をその論拠として主張するのであるが、原判決も説明しているように、上告人が当初任用された当時においては、教育職員免許法施行法八条の規定により、免許法三条一項の規定にかかわらず、上告人が高等女学校の卒業者であつたがために、当時の学校教育法施行規則九八条で定める助教諭仮免許状を有する者とみなされたためであつて、その後数次の法律改正を経た現在において、免許状なくして在職し得る根拠になるものではない。また過去において免許状なくして任用された事実によつて、助教諭は教育職員免許法三条一項の教育職員免許法三条一項の教育職員に含れないものと解すべき理由はなく、助教諭は教育職員でないとの所論は上告人独自の見解というよりほかはない。また、論旨中に、原判決の憲法一三条、七六条二項違背を主張する点もあるが、要するに、法律の解釈適用の当否に関する主張であつて、名を違憲に藉りるにすぎないものと認められる。論旨はすべて理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官横田正俊 裁判官石坂修一 五鬼上堅磐 柏原語六 田中二郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例